痛み抱えて
新章……というか、3部から繰り返してきて辿り着いた"今"のゼファーとカナは3部の二人とは関係性が変わってるんだなって思いました。多分3部のカナだったらゼファーが"痛み"を隠していることを放っておかないと思うんです。「辛いことがあるなら話して。一緒に分け合いましょう」ってきっと言う。
でも"今"はそういうこと言わないんですね。ゼファーが痛みを隠してウソをついていることをわかっていて、自分も同じようにするんです。「お返し」じゃなくて「おあいこ」にしたから。痛みを抱えることも、それを表に出さないためのウソをつくことも「おあいこ」なんですね。
そうしてお互い──というよりゼファーとカナに限らず"みんな"ですね、未だ残っている消えることのない痛みを表に出さず、でも認め合って一緒にいる。そうすることの「正しさは知らない」。正しいかどうかはわかってないんです。もしかしたらもっと他にその痛みを癒せるような関係性の築き方もあるのかもしれない。けれど彼らはこの方法を選んだんですね。
互いの中に残った"痛み"を消そうとせず、それを抱えていこうとするのは幾度となく繰り返した死の軌跡を受け入れた彼ららしい選択かもしれません。というか一緒にいる限り"痛み"は消えないんでしょうね。でもそれでも「共に生きることを選んだ」んです。痛みも傷も内包して、その上で笑っていられる"みんな"の姿はやはり美しく、でもどこか見ていて苦しいものがありますね。
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